修士論文

修士論文(山田 裕大)

保育施設における行動観察調査との誤差を少なくするための3点測量に関する研究

研究目的:

建築計画学では対象の人物の居場所や行為を研究するためにビデオ撮影による行動観察調査を行うことが一般的である。しかし、保育施設では調査を実施できる日数が限られているため、膨大な時間をかけることなく効率的に調査をすることが求められる。そこで、位置情報システムを調査に活用することにより効率的に園児の居場所を特定することができると考えた。「子どもたちが自由に遊べる園庭」を目指し、園庭の適正な密度をGPSにより分析する研究等が実施されているが、屋内環境ではGPSの利用が難しいためBLEビーコンを利用した位置測定技術が広く利用されている。しかし、これらの機器は精度が低いことが問題として挙げられることから、保育施設における屋内での位置情報を利用した研究は実施されていない。本研究の目的は保育施設での行動観察調査において、位置情報システムによる測定データの精度を高めるための条件を明らかにすることで、保育施設の屋内における現状の位置情報システムの利用法を提示することである(第⼀章)。

研究方法:

調査対象施設は、神奈川県厚木市のK園、福井大学工学棟内のN研究室、製図室で行うこととした。また、本研究では、行動観察調査と位置情報システムを活用した調査を行い、2つの調査によって得られた結果を照合することで精度を確認した。使用する機器に関しては株式会社obniz社のものとし、BLEを周囲に送信するビーコンタグ(送信機)を園児の服に装着し、受信信号強度(RSSI値)を測定するゲートウェイ(受信機)をライトレールに取り付けることによって、送受信間の距離を測定するBLE3点測量によって実験を行っていくこととした(第⼆章)。


研究結果:

行動観察調査と位置情報システムによるプロットの比較を行った結果、アトリエコーナーで園児が工作をしていた時間帯に精度が高くなった。精度の向上には三角形の大きさ、壁等に信号が遮断されない環境、園児の動きが制限される環境等の条件が必要になると考えられる(第三章)。


また、N研究室では①~⑤の条件判別実験を行った結果、極力精度を向上させることができる条件を明らかにすることができた。得られた条件は・「BLE3点測量の計測の範囲(ゲートウエイ同士を結んだ際にできる三角形)は3.0m正三角形で行うこと」・「ビーコンタグの取り付け位置を天井面から1.0m程度の位置とすること」・「ビーコンタグを取り付けた人がなるべく動かない環境下で計測をすること」・「固定タグをそれぞれの辺の中心に設置(1つの三角形に対し、3つの固定タグ)すること」の4つである。(第四章)。


これらの結果を踏まえて製図室でゾーン判別の実証実験を行うこととした。2回の10分間計測ではそれぞれ98%、89%と精度の高い結果が得られた。また、実験の結果をビーコンタグ単体で見ると、計測中移動していない1、2のタグは2回の実験を通して100%の精度が得られた。一方で、1分おきに移動をしている3、4、5、6のタグでは約90%の精度が得られた。(第五章)。


結論:

以上の結果から三章、四章で明らかとなった条件下でゾーンごとに位置を判別し、抽出基準を下回るタグを取り除くことで、広い空間の指定したゾーン内で精度の高い結果を得ることが可能であることが分かった(第六章)。

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