風景をつなぐ家 福井市一乗谷の、川と山、雑木林、鉄道に挟まれた敷地に建つ住宅です。豊かな景色を大きな窓で一望するだけでなく、空、川、木々、電車などを小さく切り取り、一つひとつの風景と親しくなる住まいを提案しています。窓は上や下にも設けられ、立つ、座る、寝る、しゃがむ、背伸びするといった姿勢によって見えるものが変わります。子どもの身長が伸びれば、同じ窓から別の景色が見えるようになり、開口そのものが成長を記
段差につどう、おりてゆく 忙しい家族が別々に過ごす時間が増えるなか、住まいの中心へ自然に意識が集まる仕組みを考えた住宅です。福井市の静かな住宅地で、地面を掘る、床を削るという操作から段差をつくり、家族四人が集う地階を生み出します。中央には大きな掘りごたつのような居場所があり、食事やおしゃべり、遊びを受け止めます。一階と二階の部屋は吹き抜けに向かって開き、勉強机や腰掛けになる段差から、下の階の賑わいを眺められます。
記憶の背比べ 身長の印をつけた柱や、頭をぶつけた鴨居のように、家の高さはふとした瞬間に思い出を呼び起こします。この住宅は、家族の成長に応じて見え方や使い方が変わる腰壁、窓、床、段差を『記憶の媒体』として組み込みます。子どもがよく使う場所へ向かって空間を広げ、部屋を鉛直方向に少しずつずらします。異なる高さの床や開口が、座る、立つ、のぞく、またぐといった多様な姿勢を誘い、家族同士の視線や気配を柔らかくつな
個性の波打ち際で インターネットで世界とつながれる一方、同じリビングにいる家族が別々の画面を見る現代。この住宅は、家族を同じ行動へまとめるのではなく、一人ひとりの趣味や個性を持ち寄り、それらが波のように混ざる共用空間を考えます。敷地は海と山に挟まれた越前海岸。読書、お絵描き、ガーデニング、日曜大工など、父母と兄妹の異なる活動に専用の場所を与えつつ、個室と共用部の間に中間領域を挟みます。可動的な枠組みは、棚
息継ぎの家 建物が密集し、細長い敷地が並ぶ福井市松本のまちなかで、風や光、生き物の動きを家へ取り戻す住宅です。閉鎖的になりやすい都市住宅に、街とつながる『ソト庭』を挟み込み、息苦しさから解放される暮らしを提案します。一般的な細長い家の軸を四十五度傾け、敷地との間に三角形の隙間をつくります。そこを風が通り抜ける庭とし、部屋を雁行させることで互いの視線をずらします。近い部屋同士でも直接見えにくいため、浴
光の先に見えるもの 福井市中央卸売市場を、食べ物を運ぶためだけの閉じた施設から、市民が仕事の気配や地域の歴史に出会える場所へ変える改修案です。注目したのは、市場棟と卸売棟の両方にあるトップライト。屋根から差し込む光を手がかりに、働く人と訪れる人、過去と未来をゆるやかにつなぎ直します。約80メートル離れた二つの建物の間には、駐車場を横断する大屋根の回廊を架けます。曲線を描く屋根の下を歩けば、商品の移動や競り、
まちの個性をつなぐ 交通の結節点として発展した敦賀市と、海と山に抱かれた河野村。性格の異なる二つの町を対比し、それぞれの『個性』を交換することで、地域の課題を新しい関係へ変える計画です。商店街の空洞化、漁業の後継者不足、海洋ごみ、空き家といった問題を一つの町だけで抱え込ませません。敦賀では長いアーケードと空き店舗を、出会いや滞在が生まれる場所として読み替えます。河野では密集した家並み、海への眺め、近所付き合
c-Wall 引っ越しのたびに、時計や写真、棚を外し、壁との思い出まで置いてきてしまう。そんな身近な違和感から生まれた、次の住まいへ持ち運べる壁です。家具のようでありながら空間を仕切り、住む人の時間を受け止める相棒として設計されています。高さ二メートル、幅一・二メートル、奥行き三十センチを基本寸法とし、ハンドルでキャスターを出して移動できます。開口の位置や大きさを変えた十一種類があり、本棚、腰掛け、収
マチの寝床 上山皓生・喜多崎匠・水野豪人・大同康友・津戸新太2023年度支部共通事業 日本建築学会設計競技コンペ一覧へ舞台は福井県あわら市の北潟湖。かつて漁やウナギ漁を中心に、人と生き物と道具がにぎわっていた湖ですが、人口減少や道路整備によって集落との結びつきが薄れつつあります。この作品は、その関係を大きな建物で取り戻すのではなく、地域に眠る「モノ」をもう一度集めることから始