湊の声に、耳をすませて

福井県坂井市の三国湊には、商いと暮らしを支えた町家や蔵が残る一方、役目を終えて失われようとする建物もあります。この作品は、古い蔵を一度見てほしいという家主の言葉をきっかけに、町に刻まれた声を聴き直し、点在する記憶を次の世代へつなぐ方法を考えました。

提案は、元材木商の蔵、元小車庫、元塩業蔵という三つの場所を再生します。蔵はアーティストの制作と展示の場、小車庫は住民が日常的に使う居場所、塩業蔵は子どもが町の文化を学ぶ場になります。庇や細い通りを延ばして建物同士を結び、歩くうちに水路、祭り、商いの痕跡へ出会う構成です。

古い建物を博物館のように凍結せず、制作、宿泊、食事、遊びなど新しい日常を受け入れる点が魅力です。住民と来訪者が同じ屋根の下で交わることで、建物の記憶は昔話ではなく現在進行形の文化になります。湊町の静かな声に耳をすませ、町全体をゆっくり再生する提案です。

山田裕大、藤原循平、井上泰志、喜多崎匠
2022年度支部共通事業 日本建築学会設計競技

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