研究内容(保育施設)

 
研究室で行っている研究の内容を紹介しています。
他にも行っている研究がありますので、随時アップしていきます。
 

子どもの運動能力を促進する遊び環境づくり

 こどもの体力は年々、低下傾向が見られています。その低下を防ぐために、国は平成24年に「幼児期運動指針」にて「幼児期は生涯にわたって必要な多くの運動の基となる多様な動きを幅広く獲得する非常に大切な時期である」と示しました。この「多様な動き」の考え方の1つに山梨大学の中村教授が提唱する「36の動き」があります。
 
 本プロジェクトではこの「36の動き」に着目して、遊びの中にどのくらいの動きが含まれているのか、遊び環境の違いによってこの動きの種類の多さは異なるのかを研究することで、子どもの体力が向上するためにどんな遊び環境が必要なのかを明らかにしようとしています。また、保育施設を専門とする日比野設計と共同研究をしております。

 

共同研究
(株)日比野設計 幼児の城
 
研究メンバー
山田優輔(2020年度修了)竹井宗忠(2019年度修了)、
和田滉太(2018年度修了)、執行良昭(2017年度修了)

 
 

 
 
 
 

屋上にネット遊具があるO園

 

 

 

保育室の内装木質化による保育への効果に関する研究

  
 保育施設では木材の利用が増えています。内装に木材を利用することが保育に及ぼす影響がどのようなものかを調べるためにアンケート調査を行いました。
 
 アンケート結果を分析すると、保育方法と子どもの様子に関する保育者の評価は、
①内装に使用する木材の割合の影響を受けること、
②3-5歳の保育室において、木質内装材がない場合の方が子どもに「注意集中の困難」や「眠気とだるさ」が見られるという評価が814%高くなることを明らかになりました。

 

共同研究
(株)日比野設計 幼児の城
 
研究メンバー
横山静香(2018年度修了)

 
 

 
 

J stage(外部サイト)」で論文が掲載されています。

 

異年齢保育の移行に伴う環境構成に関する研究

  
 兄弟数の減少などの理由から年齢別保育から異年齢保育に移行する保育施設が増えてきています。建築計画の観点から捉えると年齢別保育と異年齢別保育では環境の設え方が違うのではと考えています。
 
年齢別保育は、クラス内の子どもの発達段階が同じであるため、その発達段階に沿って環境構成を行うのに対して、異年齢保育では、異なる発達段階の子どもたちが同じクラスに編成されることからより広い発達段階を対象として環境を設えることが必要になってきます。
 
そこで、本プロジェクトでは年齢別保育から異年齢保育へ移行する際に、どのような環境の設え方の違いが生じるかを明らかにしようとしています。
 
環境を変える方法として、既存園舎をそのまま使う、一部の部屋を改修して使う、新築にする、などいつくかの段階があります
 
 

 

共同研究
京都府立大学 河合研究室
 
研究メンバー
 

 
 

 
 

 

 

スペース・シンタックスを使った保育施設のつながりに関する研究

  
保育施設の設計を行う際に「各部屋のつながり」が話題に挙がることがあります。この「各部屋のつながり」は主に隣合う、近いー遠い、同じ階などをものさしにすることが多いです。
 
ただ、「つながっている、つながっていない」は感覚的なもので人によっても違います。例えば、園庭と保育室のつながりを考えた場合、保育室が1階にあるが離れている場合と、保育室が2階だが近い場合ではどちらが園庭と保育室がつながっているでしょうか?
 
このプロジェクトでは「空間のつながり」をスペース・シンタックス理論を用いて数値化して、感覚的な「つながり」とのズレを明らかにしようとしています。数値化することで上記の2つのパターンのつながりも比較することができます。保育空間の構成のパターンによってつながりを数値化することで、設計を行う際の1つのものさしとなるように考えています。
 
 

 

共同研究
京都府立大学 河合研究室
 
研究メンバー
 南祥太(H27卒業論文・石川高専)

 
 

 
 
 
 

 スペース・シンタックス理論とは、ロンドン大学のビル・ヒリアー教授らによって提唱された理論で、都市や建築空間の研究において空間のつながりや奥行きを数量的に解析する方法として主に用いられています。

 

保育室のコーナー計画に関する研究

 

子どもの成長に合わせて保育室の環境が変わる

  
 子どもの発達に伴う保育室のレイアウトの変化を調査した研究です。
 
 保育施設では子どもの主体的活動を促すため、保育室に家具などで区画した用途を限定したコーナー(絵本コーナーなど)を設定することがあります。ただ、コーナーの計画にはガイドラインがなく先生の経験則で行うしかないという問題があります。
 
 そこで、3園10保育室を対象にコーナーの計画を調査しました。
その結果、各園で独自の年間サイクルがあること、各園の保育プログラムがコーナー計画に密接に関係することを明らかにしました。
 
 

子どもの遊びが変わることでコーナーの使い方が変わる

   
子どもの成長に合わせて保育室での遊びがどう変化するかを、コーナーの利用のされ方に着目して調査しました。
 
保育室では4月から3月まで遊び方は変化するため、その変化に適応するように環境を提供する必要があります。2園4保育室を対象とした調査により、コーナーの利用のされ方は、年間を通じて、専用的から兼用的に、固定的から可変的に変化すること、次第にコーナー以外の場所へ遊びが広がることを明らかとしました。
 

コーナーがあることで遊びが発展

   
保育室では、遊びがつながりやすいコーナーの構成が大切とされているため、保育室における複数のコーナーの全体構成を最優先に計画する必要があります。
 
 本研究では、2園4保育室を対象とした調査により、遊びどおしのつながり方(展開)には「持続・複合・発展」の3パターンがあることを明らかとしました。さらに、各パターンの遊びの展開を促すためのコーナーの全体構成が満たすべき条件を提案しました。
 

 

西本雅人 博士論文